世界の音楽情報誌「LATINA」×熊本シティエフエム791「SERENA SERATA」×蔦屋書店熊本三年坂

世界の音楽情報誌「LATINA」
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熊本シティエフエム791「SERENA SERATA」
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蔦屋書店熊本三年坂
熊本シティエフエムで毎月金曜日17:00-18:55で放送されているワールドミュージック専門番組「SERENA SERATA」で
毎月1回世界の音楽情報誌(今はWeb版)「LATINA」が選ぶする3曲をお届けしています。
蔦屋書店熊本三年坂では、LATINA編集部 花田勝暁氏のコメントと共に、収録アルバムをご紹介します。

 

今月の3曲

アーティスト名:EMICIDA(エミシーダ)

曲名:É Tudo Pra Ontem

LATINA編集部 花田勝暁氏コメント

現代ブラジルのHipHopシーンとブラック・ミュージック・シーンを牽引する才能「エミシーダ」のドキュメンタリーが12月にNetflixで公開された。
タイトル(原題)は、『AmarElo – É Tudo Pra Ontem』。

「AmarElo(「黄色」或いは、「絆を大切にする」の意)」は、エミシーダの最新アルバムのタイトルであり、「É Tudo Pra Ontem(全ては昨日のために)」は、今回選曲したシングル曲のタイトルだ。

「É Tudo Pra Ontem(全ては昨日のために)」は、映画の公開に合わせ、12月10日にリリースされたニューシングルで、アルバムには収録されていない。
ジルベルト・ジルが、参加し美しい詩と歌声を披露している。

映画は、サンパウロの伝統ある市立劇場で、アルバム『AmarElo』をベースにしたコンサートの準備〜当日の内容が中心にストーリーが進んでいく。ブラジルの黒人がどれほど権利のために闘ってきたか、エミシーダがその道に続くために、今でもどんな思いで努力を続けているかが、非常によく分かる映画だ。
観る者にもエネルギーを分けてくれる映画だと思う。

ブラジルでは字幕を出す必要もないので出ていなかったのだろうが、映画の最後にコメントしているのは、ブラジルの女性政治家、マリエル・フランコ。黒人や女性、ファヴェーラの権利のために闘う政治家だったが、2018年3月14日に、何者かによって射殺された。38才の若さだった。エミシーダのメッセージが強く出ているシーンだと思うので、こちらで補足しておきたい。

同アルバムのタイトル曲「AmarElo」のリフレインで歌われるのは、「過去に苦しんでばかりはいられない/もう十分血を流したし涙も流した/去年は死んでいたけど/今年は生きている」というメッセージで、本シングル「É Tudo Pra Ontem」のメッセージは、「(ないがしろにされた)過去のために、今、やるべきことをやること」。この映画のタイトル『AmarElo – É Tudo Pra Ontem』がこの2つの組み合わせであり、この2つのメッセージの循環が、エミシーダが今、伝えたいことなのだろう。

アーティスト名:Natalia Laforcade
(ナタリア・ラフォルカデ)

アルバム名:UN CANTO POR MEXICO VOL.1

曲名:Mi Religión

LATINA編集部 花田勝暁氏コメント

2020年のラテングラミー賞で「最優秀アルバム賞」を受賞したメキシコのSSW、ナタリア・ラフォルカデ(計3部門で受賞)。そのアルバムのリード・トラックが「Mi Religión(私の宗教)」。
近年では、ディズニー/ピクサー映画『リメンバー・ミー』(2018年日本公開、原題『Coco』)の字幕版でエンドロールも歌っており、世界から注目を浴びるラテンミュージック界のミューズだ。
1984年生まれ、2002年にアルバムデビューし、才能溢れるポップ・アイコンとして活躍したナタリア・ラフォルカデ。2010年には、その流れで、来日公演も行なった。

その後、メキシコのフォルクローレ、ルーツ音楽を意欲的に取り上げるようになり、ルーツ志向の音楽姿勢になってからも広く認めれている。
彼女の音楽性の大きな変化には、把握できない部分が多かったので、2010年の来日公演の仕掛け人でもあり、ナタリアの友人でもある志田朝美さんに、この10年のナタリアの活動をフォローしてもらう記事を書いていただいた。
https://e-magazine.latina.co.jp/n/ne68d379274f2

最優秀アルバム賞に輝いた新譜『Un Canto Por México, Vol. 1』は、ナタリアの故郷ベラクルス州にあるソンハローチョ文化センター再建支援(2017年のメキシコ中部地震で被災)のために制作され、売り上げの全収益が寄付されるという。
ソンハローチョは、同州発祥の伝統音楽。本曲「Mi Religión」は、ナタリアのオリジナル曲だが、メキシコ伝統音楽のエッセンスがしっかり織り交ぜられた楽曲だ。「あなたは音楽で、私の宗教/一度の人生では私の愛を与えることはできない」という、コッテリした歌詞にもメキシコの伝統的音楽の要素がどっぷり入っている。「音楽」を通してメキシコ人としてのアイデンティティの模索し、独自の表現を獲得しているナタリア・ラフォルカデ。偉大な才能だ。

アーティスト名:Bad Bunny&Rosalía
(バッド・バニー&ロサリア)

アルバム名:El Último Tour Del Mundo

曲名:LA NOCHE DE ANOCHE

LATINA編集部 花田勝暁氏コメント

2020年のラテングラミー賞で、ナタリアと同じく3部門で受賞した、スペイン出身の女性シンガー(SSW)、ロサリア。フラメンコと現代のエレクトロニカを融合することで、フラメンコの歴史に風穴を開けた彼女は、アメリカ大陸のマーケットも見据えて広く北米&中南米に進出した。
この曲「LA NOCHE DE ANOCHE」は、プエルトリコ出身で、レゲトン/ラテン・トラップを牽引する若き才能、バッド・バニーのニュー・アルバム『El Último Tour Del Mundo』に収録されている。バッド・バニーとロサリアの共作曲だ。

スペインという文脈と、アメリカ大陸のマーケットという異なる文脈が複雑に絡み合う彼女の躍進について、若杉実さんにその全貌を解明していただく記事を書いていただいた。
https://e-magazine.latina.co.jp/n/nf552fabcd14a

1993年に、スペイン、バルセロナに生まれたロサリアは、ジャスティン・ティンバーレイクやリアーナを聴く、当時の平均的な若者だった。フラメンコへの扉を開くきっかけとなったのは、13歳の時に、41歳で夭折したフラメンコ歌手、カマロンの歌と出会ったこと。
彼のカンテに魂を揺さぶられる、情熱を抑えきれずに独学でフラメンコを研究。大学では2年を費やしフラメンコについての論文を完成させた。その論文のタイトル『El Mal Querer(いびつな情欲)』は、そのまま、彼女が世界に飛躍することになったセカンド・アルバムのタイトルになっているから、更に驚きだ。

世界の情報誌「LATINA」

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熊本シティエフエム791

毎月金曜日 17:00-18:55
パーソナリティ:久間 珠土織

大人の魅力を、落ち着いた雰囲気で流す番組。
フレンチ・ブランジリアンミュージック・ラテン・ハワイアン・ヒーリング・カンツォーネなど色々な音楽を、様々なゲストを迎えてお送りしています。